■ 安曇野に「やすらぎの郷」があった! 『穂高老人保健センター』


こんにちは、みつばちです。信濃富士「有明山」の麓にある有明山神社には八面大王伝説に由来する魏石鬼(ぎしき)の岩窟、くぐると御利益があると言われている吾唯知足(われただたるをしる)と刻まれた大きな古銭の形をした石碑、子宝杉と呼ばれる杉の大木、そして神社建築の見事な装飾もあり、散策にも最適なスポットです。右手奥には社務所があり、お守り(「吾唯知足」の古銭の形をしたお守りがおすすめ!)も購入することができます。地元No.1のお蕎麦屋さん「くるまや」と「タヴェルナ ラピュタ」というイタリアンの人気2店があるので、ごはんにも困りません。

そんな有明山神社のすぐ目の前という有難い場所に「穂高老人保健センター」という名前の温泉施設があるのです。年齢制限なく誰でも利用できる温泉で、地元の人に長年愛され、観光客にも穴場的な人気を誇っていた温泉なのですが、先日入り口に「今年9月末で閉館します」という張り紙が。。。

以前から閉館の噂はありましたが、署名も多く集まっているとのことだったので、何とか存続するのかなと淡い期待を抱いていました。とても残念な気持ちでいっぱいです。

行政のほうでは昨年完成した「安曇野しゃくなげの湯」を代替とするという方針のようなのですが、地元の、特に割引証のある60歳以上の利用者や障害者のかたは利用料が150円で「温泉銭湯」のように使っているかたも多いようです。老人保健センターが福祉施設であるのに対し、しゃくなげの湯は強いて言えば観光型の施設です。しゃくなげの湯の料金は市内在住、70歳以上、あるいは障害者を対象とした割引後でも450円なので、単純に金額だけ比較すると3倍です。年齢条件も少しきびしめに。

石鹸、シャンプー、リンスはお風呂場に置いていないので、必要な場合は受付で各30円で購入できます。タオルは100円。

建物は老朽化していますが、お風呂場の壁の陶製タイルが一枚ごとに違う表情だったり、窓が天井までガラス製でモダンな作りだったり、窓の外に簾、なんてレトロ感漂う雰囲気がとても落ち着けて好きです。安全性の問題から、ある程度の修理や補強は必要だと思いますが、取り壊してしまうのはもったいないなあ、と感じます。

週末の朝9時過ぎに行ったのですが、地元の利用者のかたが次々と訪れ、社交場のよう。かといって部外者を排除するような感じでもなく、声をかけあったりして何だかとてもあたたかい雰囲気でした。

「ここはやっぱりいいよ。元湯(もとゆ)だでね。」
そう、泉質が最高です。山の上の中房温泉から引湯してきているんですね。

「(閉館には反対したけど)守りきれんかった」
 この施設を守るため、施設存続の陳情書には安曇野市の全人口(約10万人)の約10%にあたる1万人分の署名が集まったとか。比較として適切か分かりませんが、今年の都議選で圧勝した都民ファーストが東京都の人口の約13.7%にあたる188万票獲得とのことでしたので、10%というのはかなりの勢いの民意と言えなくもないのではないでしょうか。。。署名されたかたは穂高のかたが多いと思いますので、穂高エリア限定で%を出したらもっとスゴイ数字かも知れません。
 
「暑いから汗を流しに来たわ」
温泉は四季を通して需要があります。寒いときは体が温まるし、暑いときはさっぱりしていいですよね。ぬる湯(42度)とあつ湯(43度)があるのですが、暑かったせいか、ぬる湯が人気でした。

「やすらぎの湯はどうなるんかね」
どうやら身体障害者専用の「やすらぎの湯」という温泉が同じ施設内にあるらしいのです。共通の水道管を使っているだろうから同時に閉鎖されるのかもしれないけど、そうしたら(足を悪くしている家族を)どこに連れて行けばいいのだろう、と心配されているご様子でした。

穂高老人保健センターには談話室もあるのですが、女湯の更衣室自体が談話室のようでした。皆さん更衣室の腰掛に肩を寄せ合って座り、姉妹のように仲良くおしゃべりしているのがとても楽しそうでした。私は女湯の様子しか分かりませんが、おそらく男湯でも同様に「兄弟の契り?」がかわされているかも?

利用者同士、顔見知りのかたが多いようで、温泉施設という顔のほかに、交流の場としての役割も担っているように感じました。
 
「やすらぎ」という言葉が出てきて、大ヒット中の「やすらぎの郷」という、豪華老人ホームを舞台にしたドラマのことを思い出しました。そう、ここは安曇野の発展に貢献した人だけが150円で天然温泉を利用できる「やすらぎの郷」なのかもしれないなあ、なんて考えがふと思い浮かびました。

 150円で銭湯のように気軽に来れる温泉。健康増進、仲間とのふれあい、持病への効果。温泉に行く回数が制限されたら心や体の健康に影響が出てくるかもしれません。

温泉を楽しむというよりは、もっと日常と結びついた「湯治」のようなイメージでしょうか。湯治というのは、ある程度の長期間、例えば昔は農閑期に温泉につかって農作業の疲労から回復し、忙しい農期へ向けて療養する目的があったそうです。

行政にとっても医療費削減や労働人口の確保などのメリットがありそうです。
 
できれば施設を修繕して存続してもらえれば、とは思いますが、それが難しいのであれば現在割引券の対象となっている利用者のかたが「温泉銭湯」を継続できるよう、現存の制度で配布されている入浴券などに上乗せし、老人保健センター閉館後には市内の温泉で使えるクーポン、湯治券などを配布してはどうでしょうか。
  
安曇野市内には「安曇野しゃくなげの湯」「ほりでーゆ~四季の郷」「ファインビュー室山」「有明荘」など、一つだけでもあったら嬉しいなというぐらいの豪華施設が多数あり、きちんと維持されているので、これ以上の大盤振る舞いができなさそうなことは理解しているつもりですが、閉館のあと、特に高齢あるいは障害をもった利用者への影響がとても心配です。

>> 安曇野市 温泉・入浴施設
 
老人保健センターの閉館は9月末で、安曇野の8-9月は観光のハイシーズンです。多くのかたに「有明山神社前 温泉施設」だと思って是非この素晴らしい泉質を誇る温泉を楽しんでいただきたく、また、利用が増えて改修費が工面できた!なんて奇跡が起これば良いなあと思っています。一般の利用料は300円です。夏の暑い日も温泉に入るとさっぱりと汗がひくのでおすすめです。